イムデトラによるサイトカイン放出症候群(CRS)発現時のマネジメント
サイトカイン放出症候群(CRS)
- 本剤の投与により、サイトカイン放出症候群(CRS)があらわれることがあります。
- 随伴徴候として、発熱、低血圧、低酸素症、疲労、頻脈、頭痛、悪寒、悪心、嘔吐等があらわれることがあります。
- 本剤投与によるCRSを軽減するため、1日目及び8日目の本剤投与前1時間以内に副腎皮質ホルモン剤を静脈内投与してください。また、1日目、8日目及び15日目の本剤投与後に輸液を行ってください。
- CRSが疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導してください。
- 異常が認められた場合には、本剤の休薬又は投与中止、副腎皮質ホルモン剤、トシリズマブの投与等の適切な処置を行ってください。
- 緊急時に備えてトシリズマブ(遺伝子組換え)を速やかに使用できるよう、準備をしてください。
-
判定基準【対症療法のみを必要とする】
発熱(38.0℃以上)
低血圧:なし
低酸素症:なし -
対処法・本剤処置
【対処法】
発熱に対する対症療法
(例:アセトアミノフェン)
以下をモニタリング:
- CRSの症状(体温、血圧、パルスオキシメトリー等)
- 体液の状態(必要に応じてIV輸液を維持)
- 感染を除外するため、胸部X線検査及び適切な培養検査を検討する
【本剤処置】
回復するまで休薬する。
-
判定基準【中等度の治療を必要とする】
発熱(38.0℃以上)
低血圧:輸液で改善し、昇圧剤を必要としない
及び/又は
低酸素症:低流量鼻カニューレ又はblow-by法を必要とする -
対処法・本剤処置
【対処法】
- 入院(心電図テレメトリ、パルスオキシメトリー実施)を推奨する
- 発熱に対する対症療法(例:アセトアミノフェン)
- 必要に応じて酸素補給と輸液を行う
- デキサメタゾン*2 (又は同等薬)8mg静脈内投与を検討する
- トシリズマブ(又は同等薬)を検討する
以下をモニタリング:
- CRSの症状(体温、血圧、パルスオキシメトリー等)
- 体液の状態(必要に応じてIV輸液を維持)
- 心臓及びその他の臓器機能
- 感染を除外するため、胸部X線検査及び適切な培養検査を検討する
【本剤処置】
回復するまで休薬する。
予定されている次の用量で投与を再開する場合は、適切な医療施設で医師の判断により患者をモニタリングすること*3
-
判定基準【重度の症状】
発熱(38.0℃以上)
低血圧:昇圧剤を必要とする血行動態不安定(バゾプレシンの有無を問わず)
又は
低酸素症又は呼吸困難:高流量鼻カニューレ(>6L/min)又はフェイスマスクを必要とする
-
対処法・本剤処置
【対処法】
Grade 2の対処に加えて:
- ICUなどでの集中的モニタリングを推奨
- デキサメタゾン*2( 又は同等薬)8mg静脈内投与(8時間ごとに最大3回)
- 必要に応じて昇圧剤のサポート
- 必要に応じて高流量酸素療法サポート
- トシリズマブ(又は同等薬)を推奨
- 1日目、8日目及び15日目で推奨されている併用薬を次回の投与前に投与する
以下をモニタリング:
- CRSの症状(体温、血圧、パルスオキシメトリー等)
- 体液の状態(必要に応じてIV輸液を維持)
- 感染を除外するため、胸部X線検査及び適切な培養検査を検討する
- 難治性低血圧(輸液を2回ボーラス投与後)の場合、心エコーを検討する
【本剤処置】
回復するまで休薬する。
Grade 3のサイトカイン放出症候群が再発した場合は、投与を中止する。
予定されている次の用量で投与を再開する場合は、適切な医療施設で医師の判断により患者をモニタリングすること*3
-
判定基準【生命を脅かす症状】
発熱(38.0℃以上)
低血圧:複数の昇圧剤を必要とする血行動態不安定(バゾプレシン不可)
低酸素症又は呼吸困難:酸素補給を実施しても悪化し、陽圧酸素投与を必要とする
-
対処法・本剤処置
【対処法】
- ICUでの管理
- Grade 3での治療に準ずる
以下をモニタリング:
- CRSの症状(体温、血圧、パルスオキシメトリー等)
- 体液の状態(必要に応じてIV輸液を維持)
- 感染を除外するため、胸部X線検査及び適切な培養検査を検討する
- 難治性低血圧(輸液を2回ボーラス投与後)の場合、心エコーを検討する
【本剤処置】
投与を中止する。
サイトカイン放出症候群(CRS)対応マニュアル
静岡県立静岡がんセンター
サイトカイン放出症候群(CRS) 対応マニュアルより一部抜粋
-
ASTCT・CTCAE
【ASTCT】
発熱(38.0℃以上)
低血圧:なし
低酸素症:なし
【CTCAE】
全身症状の有無は問わない発熱
-
治療 1.解熱剤 2.ステロイド療法
1.解熱剤
- 初回の発熱時はアセトアミノフェンで対応する。
2.ステロイド療法
- デキサメタゾン8〜20mg/日投与を考慮する。(内服は8〜20mg/日、静注は6.6〜16.5mg/日)
- ICANS合併時はステロイドを投与開始することを強く推奨する。
※抗サイトカイン療法 - NCCNのCRSのガイドラインでは、3日以上持続するCRS、65歳以上の患者、併存疾患のある患者、重大な症状がある患者:トシリズマブ※1 8mg/kgを1時間かけて静脈内投与(1回800mgを超えない)する。
-
対応
- 好中球減少など、感染症の可能性を否定できない場合においては、
① 血液培養採取等の感染症の有無を評価する検査を検討する、
② 感染症を否定し得るまでは広域スペクトルの抗菌剤の投与を検討する。 - 解熱剤や補液などの支持療法を実施する。
- ICANSの綿密なモニタリングを実施する(ICEスコア)。
※解熱剤+ステロイドを使用して改善しない場合は、Grade 2の対応となりトシリズマブの投与になることを念頭においておくこと!
- 好中球減少など、感染症の可能性を否定できない場合においては、
-
ASTCT・CTCAE
【ASTCT】
発熱(38.0℃以上)
低血圧:あり
昇圧剤を使用しない低酸素症:あり
低流量(≦6L/分)【CTCAE】
輸液に反応する低血圧
又は
<40%の酸素投与に反応する低酸素症 -
治療 1.抗サイトカイン療法 2.ステロイド療法
1.抗サイトカイン療法
- Grade 1を参考にステロイド療法実施後、1時間経過して反応が得られない場合トシリズマブ※1(体重30kg以上の場合:8mg/kg)を1時間かけて静脈内投与(1回800mgを超えない)する。8時間以上経過後にトシリズマブの再投与を考慮する(24時間以内に最大2回まで)。
2.ステロイド療法
- トシリズマブ投与後、低血圧が持続する場合は、以下の量のデキサメタゾンの12〜24時間ごとの投与を考慮する。 (内服は8mg/回、静注は6.6mg/回)
- ICANS合併時はステロイドを投与開始することを強く推奨する。
-
対応
- 好中球減少など、感染症の可能性を否定できない場合においては、
① 血液培養採取等の感染症の有無を評価する検査を検討する、
② 感染症を否定し得るまでは広域スペクトルの抗菌剤の投与を検討する。 - 必要に応じて心電図、SpO2モニタリングを実施する。
- 低血圧の場合は、下肢挙上した上で500~1000mLの生理食塩水注を全開投与する。
- 必要に応じて酸素投与(2〜5Lカニューラ:FiO2 40%未満)を実施する。
- ICANSの綿密なモニタリングを実施する(ICEスコア)。
- CRSのみの場合は、Grade 2までは一般病棟で管理する。
- CRSに加えてICANSを疑う症状がある場合には、ICUでの治療を考慮する。
- 好中球減少など、感染症の可能性を否定できない場合においては、
-
ASTCT・CTCAE
【ASTCT】
発熱(38.0℃以上)
低血圧:あり
1種類の昇圧剤を必要とする(バソプレッシン※3 併用可)
低酸素症:あり
高流量(>6L/分)
経鼻酸素、フェイスマスク、ベンチュリーマスクを必要とする
【CTCAE】
昇圧剤単剤で管理できる低血圧
又は
≧40%の酸素投与を要する低酸素症 -
治療 1.抗サイトカイン療法 2.ステロイド療法
1.抗サイトカイン療法
- トシリズマブ※1(体重30kg以上の場合:8mg/kg、体重30kg未満の場合:12mg/kg)を1時間かけて静脈内投与
(1回800mgを超えない)する。8時間以上経過後にトシリズマブの再投与を考慮する(24時間以内に最大2回まで)。
2.ステロイド療法
※トシリズマブと併用
- デキサメタゾン6.6~16.5mg 静注/6時間ごとに投与する。
※ 静注の場合、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウムとしての投与量
効果がない場合は、メチルプレドニゾロン1000mg/日 静注 3日間の開始を検討する(パルス療法)。Grade 3以上ではトシリズマブとステロイドを併用するが、トシリズマブは病棟への取り寄せに時間を要するため、投与の順序はステロイド→トシリズマブの順を推奨する。
- トシリズマブ※1(体重30kg以上の場合:8mg/kg、体重30kg未満の場合:12mg/kg)を1時間かけて静脈内投与
-
対応
- ICUでの治療管理することを考慮する。(最終的には担当医判断で良い)心電図・SpO2モニタリングを実施する。
- 好中球減少など、感染症の可能性を否定できない場合においては、
① 血液培養採取等の感染症の有無を評価する検査を検討する、
② 感染症を否定し得るまでは広域スペクトルの抗菌剤の投与を検討する。 - 低血圧の場合は、下肢挙上した上で500~1000mLの生理食塩水を全開投与する。補液負荷でも低血圧が持続する場合は、昇圧剤(ノルアドレナリン※2)投与を検討する。
- 必要に応じて酸素投与(6〜7Lフェイスマスク、8L以上はリザーバーマスク)
- 心臓エコーの実施を検討する。
- 必要に応じて補液を行う。
- ICANSの綿密なモニタリングを実施する(ICEスコア)。
-
ASTCT・CTCAE
【ASTCT】
発熱(38.0℃以上)
低血圧:あり
2種類の昇圧剤を必要とする(バソプレッシンを除く)
低酸素症:あり
陽圧換気(CPAP、BiPAP、挿管など)を必要とする【CTCAE】
生命を脅かす
又は
緊急処置を要する -
治療 1.抗サイトカイン療法 2.ステロイド療法
Grade 3と同様の抗サイトカイン療法、ステロイド療法を行う。
-
対応
- ICUでの治療管理を行う。
- 基本的にGrade 3と同様の対応を行っていくが、より全身状態、循環動態が不良であるため、容体に応じて適宜機械的換気及び腎代替療法を検討する。また、心臓エコーやHPSの評価を行う(フィブリノーゲンやトリグリセリド)。
ノルアドレナリン(1mg/mL)5A+生食45mL 計50mL(0.1mg/mL)を3~5mL/hrで開始
平均血圧〔最低血圧+(最高血圧−最低血圧)÷3〕65mmHgを目安に1~2mLずつ増減
最大10mL/hrまで
ノルアドレナリン10mL/hrまで増量しても平均血圧が保持できない場合
バソプレッシン(20単位/mL)2A+生食38mL(1単位/mL)を1.8mL/hrで開始
静岡県立静岡がんセンター
サイトカイン放出症候群 対応マニュアル
【監修】
和久田 一茂 先生
静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科 医長
休薬期間と再開時の用量
副作用等の理由による休薬後に本剤を再開する場合の用量は、下表を参考に投与してください。投与再開後の投与スケジュールは、用法・用量に準じてください。[7.2、7.4参照]
| 最終投与日及び投与量 | 休薬期間 | 再開時の用量 |
|---|---|---|
| 1日目、1mg | 14日以内 | 8日目の投与量(10mg)注1)、注2) |
| 14日超 | 1日目の投与量(1mg)注1)、注2) | |
| 8日目、10mg | 21日以内 | 15日目の投与量(10mg)注2) |
| 21日超 | 1日目の投与量(1mg)注1)、注2) | |
| 15日目以降、10mg | 28日以内 | 29日目以降の投与量(10mg) |
| 28日超 | 1日目の投与量(1mg)注1)、注2) |
サイトカイン放出症候群については、下記リンクより最新情報をご参照ください。

