試験概要

目的

成人の再発又は難治性のPh陽性B細胞性ALL患者におけるビーリンサイトの有効性、安全性を評価する。

試験デザイン

非盲検、多施設共同[フランス、ドイツ、イタリア、英国及び米国の19施設]、単群、第Ⅱ相試験

対象

成人の再発又は難治性のPh陽性B細胞性ALL患者45例

〔診断及び適格性の主な基準〕

  • 18歳以上の成人のPh陽性B細胞性ALL患者で、以下のいずれかに該当する患者
    • 第2世代以降のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI;ダサチニブ、ニロチニブ※1、ボスチニブ※1、ポナチニブ)1剤以上による治療後に再発又は難治性と判断された患者
    • 第2世代以降のチロシンキナーゼ阻害薬(ダサチニブ、ニロチニブ※1、ボスチニブ※1、ポナチニブ)に忍容性がなく、かつ、イマチニブに忍容性がない又は難治性と判断された患者
  • 骨髄中の芽球率が5%超の患者
    米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG) performance status(PS)が2以下の患者

〔主な除外基準〕

  • ビーリンサイト投与前5年以内にALL以外の悪性腫瘍の既往歴がある患者
  • 重要な中枢神経系(CNS)の症状の既往歴又は現病歴がある患者
  • 孤立性の髄外ALLを有する患者
  • 自己免疫疾患の現病歴のある患者又は自己免疫疾患の既往歴があり、CNS浸潤が疑われる患者
  • ビーリンサイト投与前12週間以内に同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者
  • 活動性急性又は広範性慢性の移植片対宿主病(GVHD)患者
  • CNS浸潤が判明している又は疑われる患者
  • 直前にがん化学療法、放射線療法又は免疫療法を受けた患者
  • 同種HSCTに適格である患者

※1 本邦においてALL治療に対する適応は未承認

投与方法

ビーリンサイトは、28日間の持続点滴静注と14日間の休薬を1サイクルとし、最大5サイクルまで投与した(最初の2サイクル以内にCR、CRh又はCRiが得られた場合には最大3サイクルまで追加可能とした)。
1サイクル目の1~7日目は9μg/日、それ以降は28μg/日を投与した。

投与方法 

評価項目

主要評価項目:最初の2サイクル以内のCR/CRh
副次評価項目:最初の2サイクル以内の微小残存病変(MRD)奏効率、全生存期間(OS)、同種HSCT実施率、無再発生存期間(RFS)など

〔寛解の定義〕

  • CR: 骨髄芽球率が5%以下かつ末梢循環血中に白血病細胞が認められない状態で、造血の回復について、末梢血の血小板数100,000/μL超かつ好中球絶対数1,000/μL超
  • CRh: 骨髄芽球率が5%以下かつ末梢循環血中に白血病細胞が認められない状態で、造血の回復について、末梢血の血小板数50,000/μL超かつ好中球絶対数500/μL超
  • CRi (造血機能の回復が不十分な完全寛解): 骨髄芽球率が5%以下かつ末梢循環血中に白血病細胞が認められない状態で、造血の回復について、末梢血の血小板数100,000/μL超又は好中球絶対数1,000/μL超
  • MRD奏効:PCR又はフローサイトメトリー測定によるMRD量が10-4未満
  • MRD完全寛解:PCR又はフローサイトメトリー測定による白血病細胞の検出なし

解析計画

主要解析はFASを用いて実施した。
イベント発生までの期間の評価項目(CR又はCRh持続期間、OS、同種HSCT実施後100日目までの死亡率)は、Kaplan-Meier法を用いて解析した。
また、最初の2サイクル以内のCR/CRh*率について、患者背景で層別し部分集団解析を実施することが事前規定された。RFS及びOSの副次解析として、移植実施時点で打ち切りとした場合についても評価した。

FAS:ビーリンサイトの投与を受けたすべての患者を対象とした。

患者背景

結果

主要評価項目:最初の2サイクル以内のCR/CRh

最初の2サイクル以内のCR/CRh率は、35.6%(16/45例、95%CI:21.9%-51.2%)であった。

最初の2サイクル以内のCR/CRh率(FAS)

最初の2サイクル以内のCR/CRh率(FAS)

最初の2サイクル以内の血液学的最良効果(FAS)

※2 骨髄芽球率が6~25%、かつベースライン値から50%以上低下

副次評価項目:最初の2サイクル以内のMRD奏効率

最初の2サイクル以内にCR/CRh*が得られた87.5%(14/16例)でMRD奏効が得られ、14例全例でMRD完全寛解が得られた。

副次評価項目:RFS

FASにおいて、最初の2サイクル以内にCR/CRh*が得られた患者(16例)でのRFSの中央値は6.7ヵ月(95%CI:4.4ヵ月-推定不能)であり、観察期間の中央値は9.0ヵ月であった。また、同種HSCTを受けた患者において移植実施時点で打ち切りとしたときのRFSの中央値は、6.7ヵ月(95%CI:3.8ヵ月-推定不能)であった。

Kaplan-Meier法によるRFS(FAS)

Kaplan-Meier法によるRFS(FAS) 

副次評価項目:OS

FASにおいて、OSの中央値は7.1ヵ月(95%CI:5.6ヵ月-推定不能)で、観察期間の中央値は8.8ヵ月であった。同種HSCTを受けた患者において移植実施時点で打ち切りとしたときのOSの中央値は、7.1ヵ月(95%CI:5.6ヵ月-推定不能)であった。

Kaplan-Meier法によるOS(FAS)

Kaplan-Meier法によるOS(FAS)

副次評価項目:同種HSCT実施率

FASにおいて、17.8%(8/45例)が同種HSCTを受けた。最初の2サイクル以内に
CR/CRhが得られた患者における同種HSCT実施率は、43.8%(7/16例)であった。

安全性

有害事象は全例に認められ、治験薬との因果関係が否定できない有害事象は91.1%(45例中41例)に認められた。主な有害事象は、発熱26例(57.8%)、発熱性好中球減少症18例(40.0%)及び頭痛15例(33.3%)であった。
重篤な有害事象は62.2%(28/45例)で発現し、主な事象は、発熱性好中球減少症4例(8.9%)、医療機器関連感染、敗血症及び振戦各3例(各6.7%)であった。このうち、振戦3例、発熱性好中球減少症2例、医療機器関連感染及び敗血症各1例は本剤との因果関係が否定されなかった。
投与中止に至った有害事象は6.7%(3/45例)で発現し、その内訳は、急性GVHD、肺感染及び好中球減少症各2.2%(各1例)であった。このうち、急性GVHD及び好中球減少症各1例では本剤との因果関係が否定されなかった。
本試験において、投与期間中又は投与終了後30日以内の死亡は6例に認められた。死因は、疾患進行、多臓器機能不全症候群/疾患進行、呼吸不全/疾患進行、脳出血、敗血症性ショック及び敗血症各1例であり、うち、敗血症性ショックの1例では本剤との因果関係が否定されなかった。

  • References
    1. 承認時評価資料:20120216試験 海外第Ⅱ相試験/BLI90008/DIR180241
    2. Martinelli G et al. J Clin Oncol. 2017; 35: 1795-1802/BLI00002/BLC-00024
    3. 利益相反:本試験はアムジェン社・アステラス製薬の支援により行われた。

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