海外臨床試験を含む試験成績で承認されたため、一部承認外の用法及び用量が含まれるデータを掲載しています。

試験概要

目的

小児の再発又は難治性のB細胞性ALL患者において推奨用量を決定し、その後有効性、安全性を評価する。

試験デザイン

非盲検、多施設共同[ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、英国及び米国の26施設]、単群、第Ⅰ/Ⅱ相試験

対象

小児の再発又は難治性のB細胞性ALL患者93例(第Ⅰ相パート:49例、第Ⅱ相パート:44例)

〔診断及び適格性の主な基準〕

  • 18歳未満の再発又は難治性のB細胞性ALL患者で、下記のいずれかに該当する患者
    2回目以降の骨髄再発の患者
    同種造血幹細胞移植(HSCT)実施後の骨髄再発の患者
    他の治療に難治性の患者
  • 初回再発患者:4週間以上にわたる十分な治療強度を有する標準再寛解導入化学療法で寛解に達しなかった患者
    初回寛解に達しなかった患者:十分な治療強度を有する標準寛解導入化学療法で寛解に達しなかった患者

  • 骨髄中の芽球率が25%超の患者
  • Karnofsky PSが50%以上(16歳以上の場合)又はLansky PSが50%以上(16歳未満の場合)の患者

〔主な除外基準〕

  • 活動性急性又は広範性慢性の移植片対宿主病(GVHD)患者
  • 中枢神経系(CNS)浸潤が判明している又は疑われる患者
  • 重要なCNSの症状の既往歴又は現病歴のある患者
  • ビーリンサイト投与前3ヵ月以内にHSCTを受けた患者
  • 直前にがん化学療法、放射線療法又は免疫療法を受けた患者

投与方法

ビーリンサイトは、28日間の持続点滴静注と14日間の休薬を1サイクルとし、最大5サイクルまで投与した(最初の2サイクル以内にCRが得られた場合には最大3サイクルまで追加可能とした)。
本試験は、用量漸増コホート及び拡大コホートの第Ⅰ相パートと、第Ⅱ相パートにより構成された。
用量漸増コホートでは、患者を4群に分け、5μg/m2/日(各サイクルの1~28日目に5μg/m2/日)、15μg/m2/日(各サイクルの1~28日目に15μg/m2/日)、30μg/m2/日(各サイクルの1~28日目に30μg/m2/日)、又は15~30μg/m2/日(1サイクル目の1~7日目は15μg/m2/日、それ以降は30μg/m2/日)を投与した。
第Ⅰ相パートの拡大コホート及び第Ⅱ相パートでは、推奨用量として5~15μg/m2/日(1サイクル目の1~7日目は5μg/m2/日、それ以降は15μg/m2/日)を投与した。

投与方法

※1 1サイクル目の1~7日目は15μg/m2/日、それ以降は30μg/m2/日を投与した。

※2 1サイクル目の1~7日目は5μg/m2/日、それ以降は15μg/m2/日を投与した。

評価項目

主要評価項目: 最大耐量(MTD)(第Ⅰ相パート)、最初の2サイクル以内のCR率(末梢血球数の回復が不十分な患者を含む)(第Ⅱ相パート)
副次評価項目: 全生存期間(OS)、無再発生存期間(RFS)、血液学的再発までの期間(TTHR)、同種HSCT実施率など

〔寛解の定義〕

  • CR:骨髄芽球率が5%未満かつ末梢循環血中に白血病細胞が認められない状態で、造血の回復(末梢血の血小板数及び好中球絶対数)は問わない

解析計画

主要解析はFASを用いて実施した。第Ⅰ相パート及び第Ⅱ相パートについて別々に実施した主要解析に加え、第Ⅰ相パート及び第Ⅱ相パートで5~15μg/m2/日を投与した患者について探索的併合解析を実施した。
データは全体の解析及び分類別(年齢別、ベースラインの芽球率別及びその他の疾患関連リスク因子別など)に解析を実施した。イベント発生までの時間のデータはKaplan-Meier法を用いて解析した。
また、最初の2サイクル以内のCR率について、患者背景で層別し部分集団解析を実施することが事前規定された。OS及びTTHRの副次解析として、移植実施時点で打ち切りとした場合についても評価した。
有害事象の発現率及び、注目すべき有害事象(サイトカイン放出症候群及び神経学的事象)の発現状況について集計した。

FAS:ビーリンサイトの投与を受けた患者を対象とした。

患者背景

※3 第Ⅰ相パート及び第Ⅱ相パートで推奨用量である5~15μg/m2/日を投与した患者

結果

主要評価項目(第Ⅰ相パート):MTD

第Ⅰ相パートの用量制限毒性(DLT)の評価期間において、DLTは4例[15μg/m2/日投与の1例(グレード4のサイトカイン放出症候群)、30μg/m2/日投与の2例(グレード4のサイトカイン放出症候群)、15~30μg/m2/日投与の1例(グレード5の呼吸不全)]に認められ、MTDは15μg/m2/日と決定されたが、投与開始初期のサイトカイン放出症候群の発現を考慮し、推奨用量は5~15μg/m2/日とされた。

主要評価項目(第Ⅱ相パート):最初の2サイクル以内のCR率

第Ⅱ相パートのFASにおいて、最初の2サイクル以内のCR率は31.8%(14/44例)であった。第Ⅰ相パート及び第Ⅱ相パートで5~15μg/m2/日を投与した患者(5~15μg/m2/日 FAS)における最初の2サイクル以内のCR率は、38.6%(27/70例)であった。

最初の2サイクル以内のCR率(FAS)

最初の2サイクル以内のCR率

最初の2サイクル以内の血液学的最良効果(FAS)

※4 末梢血の血小板数100,000/μL超かつ好中球絶対数1,000/μL超
※5 末梢血の血小板数50,000/μL超100,000/μL以下、かつ好中球絶対数500/μL超1,000/μL以下
※6 末梢血の血小板数50,000/μL以下かつ好中球絶対数500/μL以下
※7 循環血中の芽球が完全に消失し、骨髄芽球率5%以上25%未満に達し、かつ正常前駆細胞が認められる

副次評価項目:RFS

5~15μg/m2/日 FASのうち、CRが得られた患者におけるRFSの中央値は4.4ヵ月(95%CI:2.3-12.1ヵ月)であり、観察期間の中央値は11.5ヵ月であった。

Kaplan-Meier法によるRFS(5~15μg/m2/日FAS)

Kaplan-Meier法によるRFS(5~15μg/m2/日 FAS)

副次評価項目:TTHR

5~15μg/m2/日 FASのうち、CRが得られた患者におけるTTHRの中央値は5.2ヵ月(95%CI:2.3-16.4ヵ月)であり、観察期間の中央値は11.5ヵ月であった。また、同種HSCTを受けた患者において移植実施時点で打ち切りとしたときのTTHRの中央値は、3.5ヵ月(95%CI:1.9ヵ月-推定不能)であった。

Kaplan-Meier法によるTTHR(5~15μg/ m2/日FAS)

Kaplan-Meier法によるTTHR(5~15μg/m2/日 FAS)

副次評価項目:OS

5~15μg/m2/日 FASにおけるOSの中央値は7.5ヵ月(95%CI:4.0-11.8ヵ月)であり、追跡期間の中央値は11.6ヵ月であった。また、同種HSCTを受けた患者において移植実施時点で打ち切りとしたときのOSの中央値は、6.5ヵ月(95%CI:4.0-10.6ヵ月)であった。

Kaplan-Meier法によるOS(5~15μg/m2/日FAS)

Kaplan-Meier法によるOS(5~15μg/m2/日 FAS)

副次評価項目:同種HSCT実施率

第Ⅱ相パートのFASにおける同種HSCT実施率は、29.5%(13/44例)であった。また、5~15μg/m2/日FASのうち、最初の2サイクルにCRが得られて同種HSCTを受けた患者の割合は、48.1%(13/27例)であった。

安全性

有害事象は全例に認められ、治験薬との因果関係が否定できない有害事象は86.0%(80/93例)に認められた。第Ⅰ相パートの各群における主な有害事象は、5μg/m2/日投与で発熱及び頭痛各5例(各100%)、15μg/m2/日投与で発熱7例(100%)及び高血圧5例(71.4%)、30μg/m2/日投与で発熱5例(100%)、貧血及びサイトカイン放出症候群各4例(各80.0%)、15~30μg/m2/日投与で発熱4例(66.7%)、疼痛、好中球数減少、白血球数減少及び低カリウム血症各3例(各50.0%)、5~15μg/m2/日投与で発熱21例(80.8%)及び貧血13例(50.0%)であった。第Ⅱ相パートにおける主な有害事象は、発熱35例(79.5%)、貧血及び頭痛各16例(各36.4%)であった。
重篤な有害事象は58.1%(54/93例)で発現した。第Ⅰ相パートの各群で2例以上に認められた事象は、5μg/m2/日投与で発熱2例(40.0%)、15μg/m2/日投与で呼吸不全2例(28.6%)、30μg/m2/日投与でサイトカイン放出症候群2例(40.0%)、5~15μg/m2/日投与で発熱及び発熱性好中球減少症各3例(各11.5%)であり、うち、5μg/m2/日投与の発熱2例、15μg/m2/日投与の呼吸不全1例、30μg/m2/日投与のサイトカイン放出症候群2例、5~15μg/m2/日投与の発熱2例及び発熱性好中球減少症1例は、本剤との因果関係が否定されなかった。第Ⅱ相パートにおける主な事象は、発熱及び発熱性好中球減少症各5例(各11.4%)、サイトカイン放出症候群3例(6.8%)であり、うちサイトカイン放出症候群3例、発熱及び発熱性好中球減少症各2例は、本剤との因果関係が否定されなかった。
投与中止に至った有害事象は10.8%(10/93例)で発現した。第Ⅰ相パートにおいて各群で2例以上に認められた事象はサイトカイン放出症候群2例(30μg/m2/日投与)であり、いずれも本剤との因果関係が否定されなかった。第Ⅱ相パートで認められた事象は、サイトカイン放出症候群及び白血病再発各1例(各2.3%)であり、うちサイトカイン放出症候群1例では本剤との因果関係が否定されなかった。
本試験において、投与期間中又は投与終了後30日以内の死亡は18例に認められた。疾患進行(6例)以外の死因は、多臓器機能不全症候群/疾患進行及び呼吸不全各2例、呼吸不全/疾患進行、心肺不全、多臓器機能不全症候群、敗血症、真菌感染、DIC/疾患進行、心不全及び血小板減少症/疾患進行各1例であり、うち、心肺不全、多臓器機能不全症候群、呼吸不全各1例は本剤との因果関係が否定されなかった。

【用法及び用量】

通常、ブリナツモマブ(遺伝子組換え)として以下の投与量を28日間持続点滴静注した後、14日間休薬する。これを1サイクルとし、最大5サイクル繰り返す。
その後、ブリナツモマブ(遺伝子組換え)として以下の投与量を28日間持続点滴静注した後、56日間休薬する。これを1サイクルとし、最大4サイクル繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。

  • 体重が45kg以上の場合:1サイクル目の1~7日目は1日9μg、それ以降は1日28μgとする。
  • 体重が45kg未満の場合:1サイクル目の1~7日目は1日5μg/m2(体表面積)、それ以降は1日15μg/m2(体表面積)とする。ただし、体重が45kg以上の場合の投与量を超えないこと。
  • References
    1. 承認時評価資料:MT103-205試験 海外第Ⅰ/Ⅱ相試験/BLI90007/DIR180240
    2. von Stackelberg A et al. J Clin Oncol. 2016; 34: 4381-4389/BLI00009/BLC-00023
      利益相反:本試験はアムジェン社・アステラス製薬の支援により行われた。

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