薬剤の特徴
ビーリンサイトとは
患者さん自身のT細胞を使い、その免疫反応によってがんを死滅させる、従来の化学療法とは異なるタイプの抗がん剤です。今までに受けていた治療で効果が十分でなかったり、再発したりしたB細胞性急性リンパ性白血病に対して点滴で投与される薬剤です。
従来の化学療法は、DNA合成阻害、細胞分裂阻害、DNA損傷、代謝拮抗、栄養阻害などの作用により、がん細胞を攻撃し、殺傷したり増殖を抑えたりする治療法です。一方ビーリンサイトは、B細胞上に発現するCD19とT細胞上に発現するCD3の両方に特異性をもつ二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体であり、B細胞性ALL細胞にT細胞を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する免疫療法剤です。
従来の化学療法の作用 (イメージ)

ビーリンサイトの作用 (イメージ)

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References
須永真司著. 病態生理がわかればケアがわかるみるみるナットク血液疾患. 東京 文光堂; 2011. p39 を参考に作成
ビーリンサイトの作用機序の詳細については、「作用機序」をご参照下さい。
- 投与速度が適切に管理できる輸液ポンプを用いて、28日間継続して投与する点滴静注剤です。
- ビーリンサイトが輸液バッグや輸液チューブに吸着するのを防ぐために、本剤には輸液バッグに加えて使用する輸液安定化液が同梱されています。 調製時は、本剤を注射用水で溶解し、その溶液を輸液安定化液が入った輸液バッグに加えます。輸液安定化液は本剤の溶解に用いないでください。
投与方法について
投与方法の詳細については、「動画でみる調製・投与方法」をご参照下さい。
ビーリンサイトの投与方法のほか、治療の概要、調製方法についても動画で紹介しています。

副作用・対処法・日常生活の注意点
重要な副作用とその対策①神経学的事象
神経学的事象
本剤投与により、脳神経障害、脳症、痙攣発作、錯乱状態、失語症などの脳、脊髄、神経、筋肉の異変(神経学的事象)があらわれることがあります。
神経学的事象の主な症状
□頭痛
□眠り込んでしまう
□不眠
□不安
□めまい
□軽度の意識混濁
□手足のふるえ
□興奮状態
□首のふるえ
□幻覚
□活動量や発話量が少なくなる
□妄想

このような副作用があらわれることがあるため、ビーリンサイト投与中には自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないように指導してください
主な状態 | 主な症状 |
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脳症 |
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痙攣発作 |
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錯乱状態 |
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失語症 |
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詳細については「重要な副作用とその対策 神経学的事象」をご参照ください。
国内外で行われた各臨床試験での神経学的事象の発現状況として有害事象の発現率や事象名、事象の消失までの期間や神経学的事象が発現した場合の対処法を記載しています。重要な内容ですので、ご確認いただき診療の際にお役立て下さい。
重要な副作用とその対策②サイトカイン放出症候群(CRS)※
※MedDRA PTの毛細血管漏出症候群、毛細血管透過性増加、サイトカイン異常、サイトカイン放出症候群(CRS)、サイトカインストーム、サイトカイン検査、及び貪食細胞性組織球症をCRSとしました。
サイトカイン放出症候群(CRS)
本剤投与により、CRSの随伴徴候として、発熱、無力症、頭痛、低血圧、悪心、肝酵素上昇、播種性血管内凝固があらわれることがあります。また、infusion reaction及びアナフィラキシーショックなどがあらわれることがあります。 CRSの症状は、多くの患者において軽度から中等度ですが、場合によっては重篤な、生命を脅かす強力なサイトカイン放出(サイトカインストーム)を引き起こすことがあります。 サイトカイン放出症候群の発現を軽減するためデキサメタゾンの前投与を実施してください。
CRSの主な症状
□吐き気
□苦しくて早い呼吸
□むかむかする
□発熱
□頭痛
□体がだるい
□めまい
□ふらつき
□胸の痛み
□頭が重い
□動悸
□鼻血
□脱力感
□息切れ
□発疹
□あおあざができる
□唇が青くなる
□耳鳴り
□歯ぐきの出血

主な状態 | 主な症状 |
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infusion reaction |
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播種性血管内凝固症候群(DIC) |
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詳細については「重要な副作用とその対策 サイトカイン放出症候群(CRS)」をご参照ください。
国内外で行われた各臨床試験でのCRSの発現状況として有害事象の発現率や事象名、事象の消失までの期間、CRSの随伴徴候の発現状況、重篤なCRS発現一覧やCRSが発現した場合の対処法を記載しています。 重要な内容ですので、ご確認いただき診療の際にお役立て下さい。
日常生活の注意点
一時帰宅する場合
ビーリンサイトによる治療には休薬期間があります。医師の判断により次の治療サイクルの開始まで、患者さんが自宅で過ごす場合もあります。 患者さんの状況によって、感染予防の必要性が生じます。
感染症を防ぐための工夫
- 外出時には人ごみを避け、マスクをする
- 帰宅後は手洗い・うがいをする
- 生ものは避け、火の通った食べ物を口にするように心がける

小児患者が投与を受けている場合
まだ自分の症状を表現できない年齢の患者さんでは、副作用に伴うさまざまな症状を訴えることができない場合もあります。そのため、これまでと違う様子や行動などがみられたら、医師や看護師に伝えるように、ご家族に指導を行ってください。 それ以外でも気になることがあれば、医師や看護師に相談するように伝えてください。
