造血器腫瘍診療ガイドライン

「造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版」について

日本血液学会より2013年に造血器腫瘍診療ガイドラインの初版が発刊され、本ガイドラインは、国内における造血器腫瘍疾患の診療の場において広く活用されるようになりました。2020年に第2版補訂版が

出版されましたが、近年の造血器腫瘍に対する治療薬・治療法の進歩は目覚ましく、それに対応するため、第3版(2023年版)が発刊されました。

今回の改訂では、ALLの治療アルゴリズムも改訂されています。

ALLの治療アルゴリズム1)

ALLの治療アルゴリズムは以下のとおりで、寛解導入療法の選択は、まずPh染色体の有無で分類していきます。


ALLの治療アルゴリズム

図_ ALLの治療アルゴリズム

造血細胞移植ガイドライン

「造血細胞移植ガイドライン 急性リンパ性白血病(成人)」について2)

成人ALLに対する造血幹細胞移植についてガイドラインが策定され、2020年9月には、近年の治療の進歩を踏まえ、第3版に改訂されました。 第3版は、同種造血幹細胞移植に対してPh陰性ALLとPh陽性ALLに分け、詳細に検討した包括的ガイドラインとなっています。

Ph陰性ALLに対する造血幹細胞移植3)

16歳から65歳までの患者を対象としますが、年齢のみを基準として移植適応を決定することは推奨されていません。

移植の適応とその推奨レベルは以下の通りです。第一寛解期の高リスク、第二以降の寛解期がいずれも移植適応として推奨されています。

同種移植 自家移植
HLA適合同胞 HLA適合非血縁 臍帯血
第一寛解期 標準リスク GNR/CO GNR/CO GNR/CO GNR
リスク不明 CO CO CO GNR
高リスク S S S GNR
第二以降の寛解期 S S S GNR
再発進行期/
寛解導入不応期
CO CO CO GNR

B-ALL、T-ALLとも以下の基準でリスクを分類する

高リスク:KMT2A(MLL)再構成、低2倍体(hypodiploidy)(染色体本数44本以下)、複雑核型(反復性遺伝子異常を認めず、染色体本数40-50、かつ、5つ以上の異常を持つ)、BCR-ABL1-like、
初回寛解導入法で完全寛解(CR、CRi)導入不応例、寛解導入療法後(End Of Induction: EOI)のMRD陽性、のいずれかの予後不良因子を持つ
標準リスク:高リスクの予後不良因子を持たない(EOI MRD陰性を含む)
リスク不明:染色体検査 不明、EOI MRD不明 など

S: standard of care 移植が標準治療である(合併症、QOLなどの不利益についても検討した上で総合的に決定すべきである)
CO: clinical option 移植を考慮してもよい
Dev: developmental 開発中であり、臨床試験として実施することがのぞましい
GNR: generally not recommend 一般的には勧められない


Ph陽性ALLに対する造血幹細胞移植4)

重篤な臓器障害や活動性の感染症のない患者さんを対象としています。
移植の適応とその推奨レベルは以下の通りです。第一寛解期、第二以降の寛解期ともに移植適応として推奨されています。

同種移植 自家移植
HLA適合同胞 HLA適合非血縁 臍帯血
第一寛解期 S S S Dev/GNR
第二以降の寛解期 S S S GNR
再発進行期/
寛解導入不応期
CO CO CO GNR

S: standard of care 移植が標準治療である(合併症、QOLなどの不利益についても検討した上で総合的に決定すべきである)
CO: clinical option 移植を考慮してもよい
Dev: developmental 開発中であり、臨床試験として実施することがのぞましい
GNR: generally not recommend 一般的には勧められない

  • References
    1. 日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版. 東京: 金原出版; 2023. p.69
    2. 日本造血細胞移植学会 造血細胞移植ガイドライン 急性リンパ性白血病(成人)(第3版), p1, 2020
    3. 日本造血細胞移植学会 造血細胞移植ガイドライン 急性リンパ性白血病(成人)(第3版), p3, 2020
    4. 日本造血細胞移植学会 造血細胞移植ガイドライン 急性リンパ性白血病(成人)(第3版), p20, 2020

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