疾患(急性リンパ性白血病とは)

症状

ALLによくみられる症状

ALLでは、貧血、発熱、出血傾向などの症状がみられます。

正常な血液を作れなくなり、赤血球や白血球、血小板などが不足した状態になるため、全身に症状があらわれます。

ALLの症状に関する主な血球と症状

血球の種類 正常時の働き 減少により引き
起こされる状態
あらわれる可能性がある症状
赤血球 酸素を運ぶ 貧血になりやす
くなる
  • 動悸
  • 息切れ
  • 易疲労感
白血球 ウイルスや細菌など
から体を守る
感染症にかかり
やすくなる
  • 発熱
  • 風邪をひきやすくなる(発熱や全身のだるさは風邪の症状に似ているが、風邪薬を飲んでもしつこく治らない)
血小板 止血作用がある 出血が止まりに
くくなる
  • ぶつけた覚えもないのにあざや
    点のような出血斑が出る
  • 鼻や歯肉から出血しやすくなる

飛内賢正監修. 血液のがん. 東京: 講談社; 2015. p.11,50.より作成

直江知樹編. インフォームドコンセントのための図説シリーズ 白血病/骨髄異形成症候群. 大阪: 医療ジャーナル社; 2013. p.9.より作成

診断

ALLの診断のための検査

ALL確定診断までの流れ

ALLの診断においては、問診で病歴や自覚症状を聞き取り、触診により診察を行います。血液検査で白血球、赤血球、血小板の数などの確認のほか、白血病に特有の細胞の有無を調べます。血液検査で異常が認められると、骨髄検査を行い確定診断となります。

その他にも、画像検査や中枢神経の検査などを行い、合併症の有無や臓器の異常、脳神経組織への浸潤などを確認します。

ALL確定診断までの流れ

図_ ALL確定診断までの流れ

飛内賢正監修. 血液のがん. 東京: 講談社; 2015. p.51.より作成

骨髄検査の内容

骨髄検査では、骨に針を刺して骨髄液を採取し、白血病のタイプなどを詳しく調べます。 検査項目としては以下のものがあります。

骨髄芽球比率 正常≦5%、ALL≧25%、AML≧20%
ミエロペルオキシダーゼ染色の
骨髄芽球比率
骨髄系の一部とリンパ系<3%、骨髄系≧3%
細胞表面マーカー フローサイトメトリーによる測定で、B細胞系かT細胞
系のALLか確認
染色体・遺伝子検査 染色体・遺伝子の異常の有無を確認

骨髄検査の実際

採取前に麻酔をして行いますが、瞬時に吸入採取するため、引っ張られるような強い痛みを生じます。

針を刺す位置は、腸骨が推奨されています(他に胸骨や、乳児の場合には前脛骨部が推奨されます)。

図_骨髄検査の実際

飛内賢正監修. 血液のがん. 東京: 講談社; 2015. p.51.より作成

医療情報科学研究所編. 病気がみえる vol.5 血液. 第2版. 東京: メディックメディア; 2017. p.17,18,20-21,108-110,132.より作成

ALLにおける染色体異常:「フィラデルフィア染色体」について1)

ALLを引き起こす染色体異常の1つとして、フィラデルフィア(Ph)染色体が知られています。

Ph染色体は9番染色体と22番染色体が融合した染色体異常であり、骨髄検査により検出されます。成人ALLの25~40%にPh染色体がみられます。

これまで、Ph陽性ALLは予後不良な疾患でしたが、近年ではチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)が登場し、治療に用いられています。

Ph染色体の構造とALL発症

図_Ph染色体の構造とALL発症

1) 飛内賢正監修. 血液のがん. 東京: 講談社; 2015. p.56-57.より作成

治療

治療の流れ

成人ALLの治療

ALLは進行が速いため、診断された場合には、すぐに治療を開始し、完全寛解を目指します。

治療の流れ

図_治療の流れ

東原正明・須永真司編. 血液内科クリニカルスタンダード. 第3版. 東京: 文光堂; 2015. p.125,127,134-135.より作成

飛内賢正監修. 血液のがん. 東京: 講談社; 2015. p.52-53.より作成

医療情報科学研究所編. 病気がみえる vol.5 血液. 第2版. 東京: メディックメディア; 2017. p.117,130,133.より作成

小児ALLの治療2)

診断後、速やかに初期治療を開始し、中枢神経浸潤予防を早期から頻回に行います。全治療期間は最低2年間行うことが強く推奨されています。

図_小児ALLの治療

薄井紀子編. 急性リンパ性白血病(ALL)の基礎と臨床. 大阪: 医薬ジャーナル社; 2016. p.174,176.より作成

日本小児血液・がん学会編. 小児白血病・リンパ腫 診療ガイドライン 2016年版. 2016. p.9,13,15,17,32.より作成

完全寛解(CR:Complete Remission)とは?

完全寛解とは、検査で「がんがみつからない状態」のことで、白血球細胞が残存している可能性があるため、治癒(完治)とは異なります。

完全寛解には、段階別に形態学的完全寛解と分子遺伝学的完全寛解があり、まず形態学的完全寛解を目指します。

完全寛解に到達しても、体内には微小残存病変(MRD:Minimal Residual Disease)が残存している可能性があります。

寛解、MRDの定義

図_寛解、MRDの定義

飛内賢正監修. 血液のがん. 東京: 講談社; 2015. p.8.

医療情報科学研究所編. 病気がみえる vol.5 血液. 第2版. 東京: メディックメディア; 2017. p.117-118.より作成

直江知樹編. インフォームドコンセントのための図説シリーズ 白血病/骨髄異形成症候群. 大阪: 医療ジャーナル社; 2013. p.26-27.より作成

ALLの治療による体内の白血病細胞の総数の変化3)

MRDがある場合は、MRDがない場合よりも早期再発するといわれています。

再発を防ぐため、完全寛解に達した後もMRDを減らし、白血病細胞が限りなくゼロに近くなる状態を目指し治療を続けます。

体内の白血病細胞の総数の変化

図_体内の白血病細胞の総数の変化

直江知樹編. インフォームドコンセントのための図説シリーズ 白血病/骨髄異形成症候群. 大阪: 医療ジャーナル社; 2013. p.26-27.より作成

  • References
    1. 薄井紀子編. 急性リンパ性白血病(ALL)の基礎と臨床. 大阪: 医薬ジャーナル社; 2016. p.136-137.
    2. 医療情報科学研究所編. 病気がみえる vol.5 血液. 第2版. 東京: メディックメディア; 2017. p.133.
    3. 薄井紀子編. 急性リンパ性白血病(ALL)の基礎と臨床. 大阪: 医薬ジャーナル社; 2016. p.74.

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